1. 銘酒市川 店主市川祐一郎の「晩ごはん」が楽しみ【その4 和食にはなんてたって日本酒が似合う】

ちょっと大人の酒談義


連載コラム「銘酒市川 店主市川祐一郎の 晩ごはんが楽しみ」


【その4 和食にはなんてたって日本酒が似合う】
静岡新聞社 しずおかのビジネス情報誌 「Vega」 2004 VOL74 掲載
 私の楽しみはなんといっても、家族みんなでワイワイと食べる「晩ごはん」。 店舗兼住宅の小さな酒屋を営んでいるため、1日の大半はお店にいる。 だから夕方、母か家内が台所に立って、夕げの支度を始めるのが分かる。 コトコト聞こえてきだすと、もううれしくなってくる。台所から出てきたところをつ かまえて、「今日のおかずはなあに?」と聞く。

「おおっ!今日は私の大好物の大根葉のぬか漬け!」 これさえあれば、何杯でもごはんが食べられるから不思議だ。「おかわりっ!」 大根は祖母が近くの畑で精魂込めて作ってくれては、持ってきてくれる。 スーパーなんかで売られている大根は、根?のところだけで、葉付きには なかなかお目に掛かれない。だから大根の「葉っぱ」は貴重品なのである。 皆さん、どうぞ棄てないでね。めちゃ美味しいの漬け物ができるんですよ。

その大根葉をぬか床で一夜漬けする。私はちょっと「浸かり過ぎくらい」が好きで ある。それに蒲原特産の「いわしの削り節」(蒲原では「削りっこ」と呼んでいる がどこもそうなのか?)をバサっとのせて、お醤油をほどよくふりかけていただく。 大根葉にはすでに十分味が染みているので、お醤油はそんなに要らない。 もちろん醤油は”静岡県の誇り”御殿場は天野醤油謹製の「甘露しょうゆ」だ。

それをほかほかごはんに山盛りにのせて、バクバクっとほおばる。 「あー。うまいなあー。」しみじみと幸せを感じる瞬間だ。生きててよかった! 旨いみそ汁とこれさえあれば後はなにもいらない。(お酒は?それは必需品です) 美味しいみそ汁を作る秘訣は佳い削り節で良いダシをとることに尽きる。

余談(応援)であるが、「いわしの削り節」は我が町・蒲原の特産である。 友人の杉浦英昭 蒲原町削節商工業協同組合理事長によると蒲原の削節技術と 品質は非常に高く、特に手間ひまがかかり、技術・修練の必要な「いわしの削り節」 のその品質(よい原料と極薄に削る技術)は全国一といっても過言ではないそうだ。 そのまま食べてもおいしい蒲原の「いわしの削り節」というスゴイ味方もいるので 「大根葉のぬか漬け」はなおさら美味しいのである!

最近つくづく蒲原って町は海の幸の宝庫だなあと実感する。(神様に感謝!) したがって、そのに住む皆様は自然と、魚に対する口が肥えてしまっている。 そのひとりである私も他県の旅館やホテルで出されるお刺身をあんまり美味しく ないなあといつも感じてしまうのである。蒲原は恵まれすぎているのである。 よく考えるとなんと贅沢なんだろう!と思う。

話のついでであるが、旅館やホテルを含めた全国の飲食店様へお願いがある。 前々からずっと思っていたことだが、どうして海の幸の美味しい料理(和食)を提供 なさるのにどうして最初から乾杯はビールなんだろう?とりあえずビールなんだろう ?最初にビールを飲んじゃうとお腹がふくれて、美味しい料理のコースメニューを 最後まで美味しくいただけないのでは・・・。お刺身など生ものはビールより断然 日本酒(特にお燗)との相性がいいのになあ・・・といつも残念に思う。 日本の食文化のためにはなんとしてもここのところを改善していかないかぎり 和食の発展はないのではと危惧するところである。

お酒にしても調味料や食材にしても、本当にしっかりと造られているものをきちんと 選択することがとても大切なことだと思う。味のセンスは子ども時代に形成される。 だから、子どもたちの「食」には大人以上に気を配る必要があると思う。特に若い ご両親様、よろしくお願いいたします。日本の将来は子ども達の「食」にあるといっ ても過言ではないから。皆の「食」へ感心が自分や家族を含め、「みんなの幸せ」 に繋がるのだということをぜひ、頭の片隅にでも入れていていただければと願う。

「みんなの幸せ」。だって、美味しいものを飲んだり、食べたりしたら誰だって、笑 顔になりますよね。幸せな顔になりますよね。笑いが出てきますよね。 まさに『笑う門には福来たる』。 最後に、4回もの連載におつき合いただきました皆様に心より感謝申し上げます。

さて明日のおかずは何かなあ?

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