1. 銘酒市川 店主市川祐一郎の「晩ごはん」が楽しみ【その2 ビール】

ちょっと大人の酒談義


連載コラム「銘酒市川 店主市川祐一郎の 晩ごはんが楽しみ」


【その2 ビール】
静岡新聞社 しずおかのビジネス情報誌 「Vega」 2003 VOL72 掲載
 私の楽しみはなんといっても、家族みんなでワイワイと食べる「晩ごはん」。店舗兼住宅の小さな酒屋を営んでいるため、1日の大半はお店にいる。だから夕方、母か家内が台所に立って、夕げの支度を始めるのが分かる。コトコト聞こえてきだすと、もううれしくなってくる。台所から出てきたところをつかまえて、「今日のおかずはなあに?」と聞く。

 「なになに今日のおかずは冷や奴に焼き餃子!?」おお!うれしいじゃあーりませんか。大好物なのだ!飲み物はもちろんビール!暑くなったし、今夜のおかずなら、なんてったってビール。ビールに決まりなのだ!その最初の極楽の一杯のために昼過ぎからいそいそと血のにじむような努力?を始める。「水抜き」だ。世のおとうさん方とまったくいっしょ。

 ”その瞬間”を目指してがんばり、ようやく仕事も一段落。「今日も終わったあ!」おつかれさま!の声があっちでこっちであがる。いよいよ待ちに待ったビールタイム!無表情を装っても、うれしさで顔がピクピクほころぶ。(ここでゴルゴ13のそうなった顔を想像すれば愉快さ倍増である)

 おっと、冷えたビールが来た来た来た!喉が鳴るぜ!ビールの栓を「シュポン」と抜き、大きめのグラスにターッと注ぐ。そして”グビッグビッ”。体がブルっと震える。ああっ生きててよかった!死んでもいい(死にたくはないが)と思う瞬間である。余談であるが「びん」の方が「缶」より美味しく感じるのは私だけか?

ホッと一息ついたところで、ビールの思い出をふたつ。

【オクトーバーフェスト】
 一昨年、「ドイツで本場のビールを味わいたい」という長年の夢を実現するためにドイツに行ってきた。仕事とは全く無縁の旅。某ビールメーカーの昔の大ヒットCM「ミュンヘン・札幌・ミルウォーキー」で有名なミュンヘンではちょうど「オクトーバーフェスト」というビールのビッグイベントがはじまる直前だった。

 「オクトーバーフェスト」とはビールをこよなく愛するものなら生涯一度は参加したいという夢の祭典。しかし予約の段階で、時すでに遅く、期間中どのホテルも満室で悔しいかな参加は断念せざるをえなかった。が、せめて、会場だけでも見ておきたかったので足を運んだ。あまりのスケールの大きさに驚いた!大型体育館のようなビアホールがあちこちに作られている。ひとつのホールだけでも1万人位の収容ができそうだ。また大型遊園地でないとお目にかかれないようなアトラクションが臨時で広場に据え付けられている。思わず「おおおっ!」と目が点になった。このイベントはすごい。すごすぎる。今度は必ずやこのお祭りに参加してやるゾ!とその場にいながら決意をした次第。

 代わりにといっては何だが、「ホーフブロイハウス」という有名なビアホールで、ガンガン飲み、ひとまず、”ドイツでビール”の夢は叶えた。大ジョッキが小ぶりのピッチャーくらいあった。さすが本場!ビールの旨さとその場の雰囲気は日本では到底味わえない格別なものだった。おじいさんが、「お前日本人か?よく来たな」と話しかけてくれて、なんの歌かわからなかったが大きな声で歌ってくれた。ありがとう!おじいさん。ドイツの人は親日家だと聞いていたが、まさにとおりだった。ちなみにミュンヘンでは、晴れた日には「ビアガーデン」、雨の日には「ビアホール」で一杯が常識なのだそうな。

【めちゃくちゃおいしいビールに出会う】
 乙女の夢(かくいう私も憧れていた)である「ロマンチック街道」をバスで旅した。四十男の私が草原の緑と空のきれいさ、それに家々の赤い三角屋根のすばらしいコントラストに見とれながら・・・。途中休憩で立ち寄ったデュンケルスビュールという街で出会ったビールBrauerei Hauf社の「Bayerisch Dunkel」は本当にうまかった。感動モノだった。今まで飲んだなかで一番おいしかった。

 麦芽の風味がとっても香ばしく、苦味はあまり感じずマイルド。初めて飲んだ味だった。デュンケルスビュールの「デュンケル」。もしや、ここが「デュンケル」の発祥地なのだろうか?あのビールをぜひもう一度飲みたい!取り寄せたい!みなさんに紹介したい!これが最近の私の夢なのである。しかしお恥ずかしや。ドイツ語が分からない。大学の時の第二外国語だったのに、ああ情けなや。どなたか助けてください。あの旨いビールをもう一度飲むためにも!

さてさて明日のおかずは何かなあ?

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